2025.05.17 お役立ち情報

双極性障害(双極症)との付き合い方

双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す疾患であり症状は長く続きます。
そのため治療にも長期間かかることもあり、患者様だけでなくご家族などにも病気について理解していただくことが大切になります。

双極性障害は多くはうつ状態から発症することが多く、そのため精神科を受診して、うつ病と診断され治療を受けている方も多くみられます。
そのため治療経過中に躁状態が出現してはじめて双極性障害と診断が変更される場合があります。
双極性障害といっても躁状態の期間は比較的短く、多くの期間がうつ状態と言われています。

うつ状態は患者様自身もつらい症状で苦しまれることが多いですが、一度躁状態になると(状態にもよりますが)気分も高揚し、意欲もあり体も軽く何でもできるようになり患者様にとっては元気な状態のため病気が治ったのでは?と思われる方も見られます。
しかし気分は明るく元気になるだけではなく、イライラしたりせっかちになりなんでも自分が正しいと思ってしまうことも多くトラブルになることも多く見られます。

また、妄想も出現しそれによる問題行動もとってしまう場合もあります。ご家族などからすると、とても病状が分かりにくく対応に苦慮されることが多い疾患です。

 

双極性障害(双極症)の患者家族などの対応とは?

1・躁状態の時の対応例

躁状態では、患者様は気分が良く病識もないために病院へ受診することを拒み定期的な受診が出来ないことも良くあります。

その際は無理矢理に受診させるのではなく、今困っている症状(例えば眠れないなど)はないか?など聞いて気づくことがあれば相談してみようなどと提案してみたり、本人が信頼している人(会社の上司や友人等)から説得してもらうと受診などを受け入れられる場合もあります。

2・うつ状態の時の対応例

何もできず、落ち込んでおり意欲もないため自室にとじこもったり寝て過ごしたりしていると家族としてはついつい言動や態度に関して否定したくなったり、助言などをしたくなったりすることがあるかもしれません。しかし、まずは患者様の状態を理解するために聞き役に回ってみてください。また、ご本人があまり話したがらない場合は無理に聞き出すことはしなくてもよいです。いつも道理にそばにいてあげるだけでも十分安心できると思われます。

3・なまけなど気持ちの問題ではなく病気であることを理解し、療養できるようにする

うつ状態のときには、怠けているように見えてしまいご家族もイライラしたり不安になることもあるかもしれませんが、うつ状態の治療には心身の休養が必要です。

規則正しい生活を送れるようにサポートしてあげましょう。

具体的には、適切な食事と規則正しい生活リズムと睡眠、服薬順守がとても大切になります。

治療について

1・適切な薬物療法を継続し再発の兆しがあれば早めに相談

双極性障害の治療には、炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンなどの気分安定薬及びオランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの抗精神病薬を中心とした治療を継続し症状を安定することが大切です。
うつ状態も躁状態の再燃の前には前兆(イライラ、不眠、不安など)があるため早めに主治医に相談したりすることが重要です。

また、躁状態への移行期には、うつ状態のときにいろいろできなかったことをやろうと無理に行動してしまうこともよくあるため少しづつゆっくりと行動するようにするのもポイントです。

2・入院治療を検討した方が良い場合

躁状態で、幻覚や妄想状態となり他人に迷惑をかけたりトラブルが続いてしまうような場合はすぐに入院を検討した方が良いでしょう。

また、浪費や日常生活が立ち行かなくなるような場合にも環境調整のためにも入院が検討されます。

うつ状態で、気分の落ち込みがひどく食事がとれない、生活リズムが整わない、死にたくなる、休養したいなどというときにも入院加療の適応となるでしょう。
上記にあたるような状態の場合には、是非主治医などに入院加療の相談をする事をお勧めします。

 

この記事を書いた人

副理事長 加藤 豊文

精神科医
精神保健指定医
認定産業医、精神科専門医・指導医(日本専門医機構)
認知症診療医(日本精神神経学会)
認知症臨床専門医(日本精神科医学会)
認知症サポート医
老年精神医学会認定医
臨床研修指導医
児童思春期精神医学対策講習会スタンダードコース終了(日本精神科病院協会)
児童思春期精神医学対策講習会アドバンスコースⅠ終了(日本精神科病院協会)
産業保健アドバイザー
名古屋平成看護医療専門学校 看護学科 非常勤講師

専門分野等精神医学一般、うつ病リワーク、認知症
所属学会日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本老年精神医学会、日本アロマセラピー学会 MCT-J(メタ認知)ネットワーク会員など
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