統合失調症という病名をご存じでしょうか?
私たちは普段、笑ったり、泣いたり、怒ったりといった喜怒哀楽の感情を感じ、常に「思考」して生きています。
このような感情や思考は脳の精神機能を使って行われていますが、統合失調症とはこの脳の機能を上手にまとめることができず、失調している状態を指します。
ここでは統合失調症の症状の紹介、治療のためにどういったところで診察してもらえばいいのか、また統合失調症患者様との向き合い方などについてご紹介させていただきます。
目次
統合失調症とは?
統合失調症とは、色々な考えがうかんだり、考えることが困難になるなどの思考の障害がおこる状態が続き、様々な妄想や幻聴などの症状が出現したりする精神疾患です。
主にその原因は脳の機能にあると考えられています。
統合失調症は約100人に1人がかかるといわれており、決してまれな病気ではありません。
多くは、10代から20代の思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
適切な薬(抗精神病薬)や精神科リハビリテーション(作業療法やデイケア、SST)などの治療によって症状の軽快や日常生活機能を回復することができます。
統合失調症の原因について
(1)統合失調症の発症の原因は?
統合失調症の原因ははっきりとわかっていませんが、脳内で様々な情報を伝える神経伝達物質(ド-パミン過剰など)のバランス異常が関係しているのではないかと考えられています。
ストレスに対する脆弱性のある人が、環境や人間関係等様々なストレスがかかることなどが発病の理由に考えられています。(ストレス脆弱性モデル)
(2)統合失調症の症状にはどのようなものがある?
統合失調症の症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けることができます。
▼ 陽性症状
妄想:実際にないものを確信すること
- 関係妄想:周りの人の言動や行動を、自分自身に関連づけてしまう。「電車で咳をしたのは自分への当てつけだ」など
- 注察妄想:皆が監視している、家にカメラがつけられている
- 追跡妄想:誰かに狙われている
- 被毒妄想:食べ物などに毒が入っている、味が変だ
- 憑依妄想:何かが自分にのりうつっている、など
幻覚:実際にないものを、知覚してしまう
- 幻聴:周りに誰もいないのに自分に命令する声や悪口が聞こえたりする
- 幻視:実際にはないものが見える
- 幻嗅:食べ物が変なにおいがするなど
思考障害(思路障害)
- 思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。(滅裂思考)
▼ 陰性症状
無為・自発性の喪失
- 自発的に何かをしようとする意欲がなくなってしまう。不活発な生活を過ごす。
- 自閉:(引きこもり)自分の世界に閉じこもり、自室にとじこもったりして他者とのコミュニケーションをとらなくなる。
- 感情の平板化(感情鈍麻)
- 喜怒哀楽などのいきいきとした感情表現がなくなってしまう。周囲との感情交流や関心をもたなくなる
認知機能障害
病状が進行・長期化することで認知機能の低下もおこってきます。
具体的には、記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下がおこります。
このように統合失調症の症状は分類することができます。
上記のような症状が見られる場合、専門医にご相談されることをおすすめいたします。
統合失調症の可能性がある場合、どこで受診したらいい?
「診てもらいたい」と思っても、どこに相談すればよいのかわからないという方が多いと思います。
精神科病院やメンタルクリニックに行けばいいのか、または、大学病院や総合病院に行くべきなのか、迷われるとおもいます。
どこに受診したら良いか迷ったときには、お近くの保健所や精神保健福祉センターなどに相談してみるのも良いかもしれません。
現在の状態に適切な受診先を紹介してもらえるでしょう。
また、各精神科病院にはPSW(精神保健福祉士)が配置されている地域連携室等設置しているところも多くありますので、お近くの精神科病院の地域連携室等に相談してみるのも良いと思います。
統合失調症は一日も早く治療を開始したほうが病気の回復が早く、症状も軽くてすみます。まずは病院を受診して専門医に相談しましょう。
また、メンタルクリニック、精神科病院、総合病院の特徴についてまとめておきます。
メンタルクリニック、精神科病院、総合病院の特徴
メンタルクリニック
精神科クリニックあるいはメンタルクリニックと呼ばれ、精神科医が開業している外来のみの診療所です。うつ病などの気分障害や比較的軽症の統合失調症のかたが通院されています。
精神科病院
精神科専門の病院です。入院施設があるため、入院治療が可能です。精神科医だけでなく、心理士や看護師、精神保健福祉士、作業療法士などによる、多職種のチーム医療が受けられるのが魅力です。大学病院やクリニックと比較して、デイケアやレクリエーションなどの設備も整っていることが多く、リハビリテーションや、ゆったりとしたペースでの療養に向いています。統合失調症の治療には、適した治療環境と言えるでしょう。
総合病院
多くの診療科を有する総合病院の中には、精神科の外来だけでなく、入院施設も完備しているところがあります。身体合併症有する精神疾患の患者さんには、他科の専門医も充実しているこうした病院は総合的な治療に適しています。
統合失調症を発症された方への向き合い方について
身近な方が統合失調症を発症した場合、どのように向き合ったらいいでしょうか。
何よりも重要なことは、まずご家族が精神科や精神病患者様に対する偏見を乗り越えることです。
家族に統合失調症を疑う症状が出た場合、統合失調症だったら怖い、恥ずかしい、隠そうとすることは、
本人への病状に悪影響を与えることになります。
ご家族が、病気に関する正しい知識を持つことが一番大切です。
また、統合失調症を発病された方は、妄想等により猜疑心が増え、人に対する恐怖心や警戒心も増加しています。
まずは、何よりも患者様に安心を与えるような対応を心がけてください。
また、妄想からくるような本人の訴えにも、真っ向から否定するのではなく真摯に受けとめ、
困る症状があるなら専門の人に相談しようと勧めるように努めることをお勧めします。
また、対応等困る場合には、精神科病院の中にはご家族だけでも相談できる場合もありますので、是非お近くの病院にご相談してみてください。